今日も知らない街を歩く

雑記に近い形でちまちま書いていきます。

人狼TLPP参加迷走記 -感想編-

 前回からの続き。

 12時の会のトライアルに参加&15時からのトライアルを観戦&19時からの公開オーディションを観戦、と一日楽しませていただいたのですが、そこでポツポツと考えたことを書きます。

 

 失敗だった初トライアル

 12時のトライアル、レポートはこちらに書きましたが、最終日まで生き残り人間勝利でした。ゲーム的に良い終わり方でしたが、「舞台上で」「お客様に」観てもらうための人狼としては宜しくなかったと、今となっては思います。

 他のプレイヤーに説明をするために客席に背ばかり向けてしまい他の演者さんが見えなくなる、声が聞き取りにくいなど演劇的な基本要素が☓だったこともありますが、まずかったのは「観客を意識しない」「他の演者を活かさない」の二点です。

 

 真に相手するべきお客様は誰か?

 緊張するのを避けるために、観客を意図的に見ないようにしてプレイングしたのですが、やはりよろしくありませんでした。前述の「客席に背を向ける」という行為の原因はここでしょう。お客様のことを意識して尚且つ魅せるプレイをする。これがベースとなるテーマなのだから、そこは外してはいけませんでした。

 

 終演後、仕立屋テイラーさんとお話させていただいたのですが、「タウンさんは回してくれそうだから残した」と言われました。2日目の時点で人狼が自分1匹だけというかなり不利な状況でしたが、襲撃は自分がピンチになり過ぎず舞台を保つことができるように襲撃先を選んでいたのです。そして、負けはしたものの最終日まで戦い抜きました。自分たちがやっていることは「観客に見せる舞台を作る」ことであるときちんと理解しているから出てきた発言でしょう。

 

 トライアルを2戦行ったのですが、その参加者から1名ずつ計2名が19時からのオーディションに選ばれ参加していました。後で参加者の方に話を聞いたところ、

「ゲームを回せるようして欲しいという理由で選ばれたのだと思う」

と話していました。事実、オーディションの会は人狼ゲーム的には少したどたどしく、トライアルからの参加者2名が議論が空回りしないように動いていました。2人とも自分の「顧客」は誰で*1、何を求めていて、そのために何をするべきか考える。これは舞台に限った話ではありませんが、トライアルに参加するにあたってこの視点を落としていたことが悔やまれます。

 

 相手を活かすプロレスとしての人狼

 準備編で書いたように、お客様にヘタなところを見せてはいけない、なんとか印象を残したいと思い役作りをしました。結果として、運良く編集者エディという人物に恵まれ自由に演技も出来ました。しかしその反面、他のメンバーが薄い印象になってしまったのではないかと考えています。特に自分は途中からは、ほぼ人間として見られており議論を回せる位置にいたのだから、一旦自分のことは置いて、グレーのメンバーにもっと主張をさせるなどして人狼TLPTのそれぞれの演者の物語を見せる必要があったのではないかと考えました。

 人狼TLPTにはそれぞれの役者がそれぞれのプレイスタイルを持って動いています。動き方は全然違いますが、上手な人に共通しているのは「他の人の動きを殺さない」ということです。人狼のプレイングが上手くなるのはもちろんなのだけど、究極的には自分を活かした上で他者も活かす、そして勝つ。プロレスに通じるものがあるけど、人狼を舞台で演る醍醐味があるとしたらここなのかな、と思いました。

 

 自分がやる普通の人狼と舞台で役者陣がやる人狼の違いはたくさんあってうまく言語化できなかったのだけど、今回ようやく自分の中で咀嚼できました。言語化できたと言っても、まだブレイクダウンできる要素もあるし、それを元にどうやって動くかということも考えなくてはいけません。でも、それはおそらくとても楽しい作業になるでしょう。自分が人狼を面白いと思える限り。

 

 

また人狼がしたいです。

*1:この場合は観客というよりは、プロデューサー・演出陣でしょう。

人狼TLPP参加迷走記 -本番編-

  人狼TLPP、当日を迎えました。*1

  準備は自分なりにしたものの、本当に大丈夫だろうか。朝起きてからも、心配は加速度的に膨れ上がってました。坐禅をしても不安は収まりません。あまりにも収まらないので、ええいままよと開き直り、会場に行くことにしました。 

  会場近くの最寄り駅に到着したのは、開場の1時間以上前。近くのドトールで最後の準備をしました。セリフの最終チェックや、小泉八雲の本を読んで神妙な顔をしてたので「そんなに緊張しなくて大丈夫だから」とTLPP参加経験者の方に言われたりしながら、会場へ向かいました。

 

 さて、本番です。11人の一般参加者に本家人狼TLPTの演者である帽子屋ニルス役・片山徳人さんと仕立屋テイラー役・渡邊隆義さんのお2人が加わり13人で説明を受けます。構成は人狼3匹、予言者(開始時に人狼ではない人を1人知っている)、霊媒師、狩人(ボディガード)、狂人、そして人間(村人)6人の13人。処刑、襲撃された後の霊界タイムの説明を受けてて、幽霊タイムの準備を忘れたことに気付きました。幽霊タイムで時間が余った時の小話、ヨドバシカメラ中国語の真似、せっかく思いついていたのになんで掘り下げなかったんだろう。迂闊でした。参加者全員、早死は嫌だと思っていたのですが、僕は別の意味で嫌でした。幽霊タイムが回せないからです。

 

 そしてカードが配られ、役職確認。

 (ただの人間がいいです。役職とかややこしいし、人狼なんてもっての外です。何より長生きしたいです)

 その祈りが通じたのか、引いたカードは「人間」。胸をなでおろし、舞台の開始を待ちました。

 

 Playing Party開演

 ここからは自分も参加者なので完全に主観で描きます(以下、名前は敬称略とします)*2。まずは自己紹介。この村にいるのは、向かって左の席から以下の通り。

  • ディーラー:dai
  • 人狼研究家:タディ
  • 学生:ペルシカ
  • 仕立屋:テイラー
  • 編集者:エディ
  • 委員長:あずま
  • 帽子屋:ニルス
  • 女将:チェルシー
  • 旅人:ななはら 
  • 帰国子女:ローザ
  • 下着屋:アンジェラ
  • 文豪:タウン
  • 紳士:おが

 僕の自己紹介で「締め切りから逃げてきた」と言うやいなや、立ち上がり詰め寄ってくる編集者エディ。はい、彼女から逃げてきました。「原稿を書くから一緒に人狼を倒してベストセラーを書こう」と必死に弁明。自己紹介は形にはなったかなと一安心。

 

1日目

 自己紹介で緊張していたように見えたのはタディとローザ。逆に安定していたのは、ニルス、アンジェラ、おが、dai、テイラー。ただ、自分も緊張しているのでこれだけで判断するには弱いと思い一旦保留。テイラーは本公演で観たことは無いのだけれど、良い声で安定感を感じました。

 能力者は結局誰も出てこなかったため、投票方法の話に。予言者が出たら提案はあったのだけど、出なかったのだから自分の中でボツ。投票は、決選投票を何人にするか。あずまが3人ではなく5人の方が良いと言うが、それは能力者を炙り出そうとしているようにしか思えない。

 そして投票タイム。結構票がばらけるなか、タディがdaiに投票。タディ、決選投票の3人に賛成してなかった?投票がなにかおかしいと思い、タディに投票。自分はテイラーに投票されたものの1票のみ。結果、僕が投票したタディとチェルシーが3票集め決選投票。弁明でチェルシーが能力者CO。うーん、うそ臭いけどいきなりここで処刑はしたくないな、というわけで票を変えずにタディに。おが以外の票が全てタディに。おがに明日意図を聞いてみようと思い、夜時間へ。ただ、僕は人間なので目を閉じているだけですが。

 

2日目 

 「メガネが…。」

 左の席にぽつんと置いてあったメガネを慎重に拾い上げ皆に見せた。おがが人狼に襲われていた。 うーん、昨日の理由聞きたかったけど仕方ない。

 そして能力者の話題になり、エディが霊媒CO&タディが人狼だったと宣言。マジで!?随分幸先いいなあ。そして予言者がチェルシー、あずま、アンジェラの順でCO。順番考えて、アンジェラ本物でいいんじゃないかな。予言結果を元にそれぞれの視点に立つと、

アンジェラ本物:チェルシー狂人、あずま人狼

あずま本物:内訳不明

チェルシー本物:あずま狂人、アンジェラ人狼 

 アンジェラ人狼ならすでに予言者が二人出てきた上でさらに予言者として出るわけないからどう考えてもチェルシー偽物。アンジェラを信じてあずまに投票。

 しかし、決選投票であずまが真だった場合のまずさに気付きました。アンジェラが狂人で予言として出るとも思えないのでアンジェラが真だと考えていますが、可能性はゼロではないのでまず間違いなく偽物であるチェルシーを処刑するべきと、決選で票をチェルシーに変更。5対4でチェルシー処刑。危ないところでした。

 

3日目

 襲撃はdai。エディを襲わなかったことを不思議に思う理由を考えようとするも、霊媒師エディのチェルシー人狼判定に驚き完全に忘れてしまいました。アンジェラはエディを最初から人間だと知っていると言っていたので、結果が食い違っているエディは狂人。エディとチェルシー、狂人が二人いることになりアンジェラの破綻が確定。

 アンジェラが破綻し、狂人として遊ぶのを横にエディと「ベストセラーを書くぞ!!」を合言葉に必死にラストウルフ探しを始めました。霊媒エディと予言あずま、占われたニルスを除くと候補は、テイラー、ペルシカ、ローザ、ななはら。初日と2日目の投票を洗い、テイラーとローザを疑います。が、話に浮かんでこないペルシカが気になって投票したところ、ぬるっと票が集まりペルシカ処刑。振り返りで狩人だと知り、納得しました。ごめんなさい。

 

4日目

 真予言あずま襲撃。ですよねー。

 引き続きラストウルフ探し。これまでの投票を考えてもローザを疑うしかない。「違うって!」と強弁するローザだが、反論するための材料が無い。エディがいつ襲撃されるかわからないので、ここで一気に決着をつけたいと思い、ローザに投票。ほぼ満票で処刑。

 

5日目

 ニルス襲撃。ローザじゃなかったのか…orz

 残る村人は、テイラー、エディ、ななはら、アンジェラ、タウン。ここで人狼を仕留めないと、翌日パワープレイが発生して村は滅ぶ。かといって安全策をとりアンジェラを処刑するとおそらくエディが人狼に襲われる。僕は優秀な編集者を失いたくないし、エディは死にたくないのだからもっと必死。二人でどうするどうすると相談していたら

 

アンジェラ「よし、私を生かそう!」

テイラー「生かさねーよ。

 

 間髪入れずのツッコミに今日一番の笑いが起きました。結局、ななはらとアンジェラの決選投票となり、最後は満票でアンジェラ処刑。イケメンテイラーに毒薬を飲ませてもらい恍惚とした表情を浮かべて死んでいくアンジェラ。この回のMVPと評判が高かったんですが、納得です。

 

6日目

 テイラー、ななはら、タウンの三人による最終日。優秀な編集者を失い意気消沈。しかし、だからこそここで死ぬわけにはいきません。しかし、ずっとタウンは人間らしいと言われていることにテイラーが疑問を呈し、ななはらを説得してきます。こちらは投票で1日目も2日目もきっちり人狼を殺していますが、確かに身内切りと言われたら反論出来るだけの材料を積み上げてきませんでした。

 油断した。

 と同時にほぼテイラーが人狼だと決め打つことができました。テイラーとタウンがお互いに入れ合い、ななはらの投票。ななはらが迷っているところに「一緒にこの村を救いましょう」とテイラーがイケメンボイスでななはらを誘惑してきます。それは違うと反論しようと思うも、ここで突っかかっては事態が悪くなるようにしか見えず、首を振りながら黙っているしかありませんでした。

 「声がヴァルハラ」と一部で言われているテイラーの底力に心が折れそうでした。対するこちらは「断末魔がヴァルハラ*3」。同じ口から出るものなのに、なぜこんなに違うのか。自分の特性を呪いながら祈るしかありませんでした。

 

 処刑はテイラーでした。

 「大体、他の人は洋服なのに1人だけ和服っておかしいじゃないですか!」

「こちらはこういう服装が正装なんです!なんですか、この何かよくわからないヒラヒラは!」

「これは『おしゃれ』です!」

 これでななはらが最後の人狼だったら心が砕けるなと思いながら、ななはらがテイラーに投票してくれたことに心から感謝し、テイラーと最後の言い合いを繰り広げ処刑しました。

 

 決着の朝・エンディング

 ゲームマスターに「エンディングを考えてください」と言われて目をつぶります。人狼の襲撃で、肩を叩かれなければ人間勝利です。

 ゲームマスターが後ろを通り過ぎました。勝てた!!!

 目を閉じながらガッツポーズをしました。

 

 「エディ、仇はとった…!!でも、私は優秀な編集者を失ってしまった。ここで死んでいった11人の悲劇を伝えなくてはならないのに。」

 「私に手伝わせてくれませんか?私が編集者になります。」

 「頼めるのか。…ありがとう。」

 

 観客席を見た途端、セリフが飛びました。客席から笑いが漏れてようやく立ち直り

 「校正を始めよう、着いてきてくれ。」

 とななはらに声をかけ、舞台からはけていきました。

 

 

 というわけで人間勝利でした。

人狼:タディ・テイラー・チェルシー

予言者:あずま

霊媒師:エディ

狩人:ペルシカ

狂人:アンジェラ

人間:dai、ニルス、ななはら、ローザ、タウン、おが

 

 

 なお、この回のプレイログも作成しましたので併せてどうぞ。

 

 その後、15時半からのトライアル第二回、19時からの公開オーディションと引き続き見させていただき、とても楽しい一日を過ごすことが出来ました。

 一日過ごしての感想は、感想編を書きましたので、併せてご笑覧いただけますと幸いです。改めて、ご一緒させていただいた皆様、ナナちゃんをはじめとしたセブンスキャッスルの皆様に御礼申し上げます。ありがとうございました。

http://instagram.com/p/uSDWLbBt5F/

桜庭さん手書きの誓約書と小道具として使った封筒。原稿を本当に入れていました。

 

2014/10/19 23:30 追記

観戦されていた、のだ @ tanono03 さんがイラストを描いてくれました。ありがとうございます!!

 

 

*1:これまでのあらすじというか準備はこちらを参照。

*2:また、記憶を頼りに書いているので違っていたらごめんなさい。

*3:言われていません。

人狼TLPP参加迷走記 -準備編-

人狼 The Live Playing Partyに当選しました。

 
人狼 The Live Playing Theater(以下、人狼TLPT)という、人狼ゲームをベースにした舞台があるのですが、その舞台で使用している小道具などを用いて出演者とプレイできるイベント。それが人狼 The Live Playing Partyです。
 
人狼TLPTについての詳細は、以下のリンクを。
 

一年前は仕事の都合がつかずに参加できなかったので、やっと出られる!と喜びもひとしおです。しかしそこでふと我に帰りました。

 

  人狼は何回もプレイしているけど、いわゆる観客を意識したプレイって、できるのか? あの舞台に立ったとして、そこに自分が普通に立って、絵になるのか?そこら辺にいるおっさんが佇んでいるだけになるんじゃないのか?そもそも俺、アドリブ得意じゃないし、舞台上でやりとり本当に出来るのか?   考えれば考えるほど不安になってきました。しかし、申し込んで当選した以上、やり切るしかありません。そのためにできることは、当日までに可能な限り行うべき。というわけで、当日に備えてできることを洗い出してやることにしました。

 

文豪タウンの作り方

 まずはキャラクターの設定を考えます。

 人狼TLPTを見たことの無い方のために説明すると、村に住む13人の登場人物の中に紛れ込んだ3匹の人狼を倒す、という設定で物語が進んでいきます。オープニングで各登場人物がそれぞれ自己紹介をしてから、人狼を探すための議論を始めます。オープニングの自己紹介では、

「妻のデイジーと洋菓子屋をやっている」

「私は喋っていない人を積極的に疑う」

と、他の登場人物との関係性やプレイスタイルを表明したり、時には

「今年100歳になった」

「背中に剣が刺さってて抜けないから助けて」

「私は未来から来ました」

などなど、いわゆる「ぶっこみ」と呼ばれる突き抜けた設定を表明したりします。

  自己紹介で話す内容は、主に自分の職業と人狼を倒すための意気込みを話すことが多いため、まずは職業を決めます。職業は、一つしか考えられませんでした。「文豪」です。今年の夏に浴衣を着る機会があったのですが、その姿が「なんか文豪っぽい」と言われたから。理由はそれだけです。幸いなことに、少し前に行ってきた着物大市で秋冬用の和服を衝動買いしたので、服はなんとかなりそうです。あの時衝動買いしておいて良かったと心から思いました。

  文豪タウン。このキャラクターを作りこむ必要があります。

 

  まずは体型。代表的な文豪といえば、芥川龍之介や夏目漱石、森鷗外。

  いずれの文豪もほっそりとした痩せ型です。

 f:id:TownBeginner:20141003202153j:plain

 

  何で弁慶ラーメン食っちゃったんだろ……orz

  味噌バターって、バターの分余計カロリー取ってるし。美味しかったけど。

 

  弁慶ラーメンを食べたこと悔いながら自分の顔を鏡で確認しました。一時期よりも心なしかぷっくりしているように見えました。錯覚であってほしいと思いましたが、そんな都合のいいことはまず無いでしょう。そういうわけで、これ以上余計な肉が付かないよう、運動と食事に気をつけることにしました。しばらく蕎麦メインの生活にしながら、走れば多少は痩せるかなと淡い期待を抱きながら走りました。

 

  次にモデルとなる文豪を探します。誰か選ばなければいけないというわけでは無いのですが、特定のモデルがいたほうがキャラクターを構築しやすいのではないかと思い、探してみました。すると、うってつけと思われる人物が。「耳なし芳一」「ろくろ首」をはじめとした怪談話でお馴染み、小泉八雲です。人狼という怪物がいると聞いて村にやってきた、と言えば導入としては自然でしょう。

小泉八雲集 (新潮文庫)

小泉八雲集 (新潮文庫)

 

 

へるん先生の汽車旅行

へるん先生の汽車旅行

 

  本を読み、小泉八雲がどんな人物か自分なりに把握して、セリフを考えていきました。アドリブ劇のためセリフを用意してもそのまま使うことはほとんどないだろうと思いましたが、そのシチュエーションが来た時に肝心のセリフが出てこないのは、絶対に避けなければなりません。

  自分が処刑される時、知っている人間が死んだ時、パワープレイをする時&受けた時、人狼エンディング、人間エンディング。セリフをEvernoteに書いて反復しました。

 

 衣装を整え、セリフを考え、他にできることはなんだろう。

 

  文豪は当然、物語を書くことで生計を立てています。であれば、実際に物語を書けばよりキャラクターを作りこむことができるかもしれません。http://instagram.com/p/uSDsB8Bt5j/

  原稿を書くことにしました。

  伊東屋で原稿用紙と封筒を20年ぶりぐらいに買いました。慣れない万年筆で書いたので原稿用紙が汚れたけど、文豪の原稿はたいていそういうもの、と勝手に決めつけて書き続けました。*1原稿を書き、封筒に入れて準備は完了です。

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  なんとか形になった気がしました。しかしよく考えてみたら、別に医師役の人は事前に手術をしないし、原稿を書いたところで役作りにはあまり関係も無いことに気付いたのは、舞台に上がってからでした。

 

 人狼TLPP参加迷走記・本番編に続く。

*1:その時書いた原稿はこちら

人狼TLPP参加迷走記 -おまけ・文豪準備のために書いた原稿-

こちらはおまけです。

書きかけですが、役作りのために書いた原稿を置いておきます。

 

以下、原稿

 

人狼のはなし               大泉 多雲

 

 人狼。それは満月の夜に人間を食べた狼が、月光の魔力でその人物になりすまし、家族や友人を夜ごと1人ずつ餌食にしていく、忌むべき存在。



 「どうしたのナナ?眠れないの?」
 小さな女の子の人形を抱えて寝室から出てきたナナを心配して、デイジーが尋ねた。
 「うん。」
 右目を手でこすりながら、ナナと呼ばれた少女が答えた。
 「ミルク飲む?眠れない時は、体を温めれば眠れるから。」
 「うん。」
 眠気はあるけど、寝付けないのだろうか。いつもはベットに入ったらスイッチを切ったようにストンと寝てしまうのに、珍しい。少し不思議に思いながら、デイジーはホットミルクを入れるためにキッチンへ向かった。

 「ママ。怖い。」
 「怖い?」
 まだ片手で持つには大きいマグカップを持ちながら、ナナは脅えた表情をデイジーに向けた。
 「ママとパパが、『じんろう』だったらどうしよう。」
 ナナの言葉に、デイジーは昨日ナナに読み聞かせた絵本を思い出した。この村に伝わる人狼伝説をモチーフにした絵本。
 「あら大変。ママとパパが『じんろう』だったら、あっという間にナナは食い殺されちゃうわね。」
 「えっ、えっ?!」
 まるで日常会話をするかのように恐ろしい事を話すデイジー。
 「でも、ナナは『じんろう』に襲われてないわよね。」
 「うん。」
 「ママとパパが『じんろう』だったら、ナナは襲われてる。でも、ナナは襲われてない。ということは。」
 「ママとパパは『じんろう』じゃない!」
 事実に気付いた -というよりはデイジーの誘導にあっさり乗った- ナナは、大発見をしたかのように顔を輝かせてデイジーを見つめた。
 「良かった、ママもパパも『じんろう』じゃないんだ!」
 (これで眠れそうね)
 嬉しそうなナナの顔を見て、デイジーは自分の作戦が成功したことに安心し、ナナをベットに向かわせた。

 寝室のドアを音を立てないようにそっと開け、ベットの様子を確認した。かすかにナナの寝息の音が聞こえた。どうやらナナは今度こそ安心して眠りについたらしい。デイジーはリビングのテーブルのジンジャークッキーを食べながら、夫であるダンカンの帰りを待つことにした。

 (でも、最近確かに変なことが多いのよね)
 数日前に村の北側にある水車が故障したことをデイジーは思い出していた。デイジーはダンカンと共に菓子屋を営んでいるが、水車の故障により小麦粉の仕入れに難儀した。しかしそれ以上に二人を不安にさせたのは大工のデュークの言葉だった。水車が壊れたのは、自然故障ではないというのだ。デュークは村一番の大工だし、水車を作り毎日水車を点検しているのもデュークだ。つまり、デュークの点検の目をかいくぐって水車を故障させた人間がいることになる。だが、誰が何のために?
 外の雨音は激しさを増しているように思えた。例年、この季節に激しい雨は降ることはあまりない。自警団の会議に出ているダンカンはまだ帰って来ない。議題は最近増えた畑荒らしの対策、と聞いているが、ダンカンは北側の水車が壊されていたことを気にしていた。自警団の会議にはデュークも出ているので、水車のことも議題に上がっていたとしたら、会議は長引くだろう。
 ナナが寝付けないこと、北側の水車が壊されたこと、例年以上の激しい雨、最近増えた畑荒らし。普段起こらないような出来事が同時に起こると、何か不吉なことの前触れのように感じてしまう。例え、一つ一つがなんの関連も無かったように見えたとしても。一度そう感じてしまうと、それを頭から追い払うのは難しかった。だから玄関から「ただいま」と帰宅を告げる声が聞こえた時、デイジーはほっと胸を撫で下ろした。それと同時に、自分が言いようのない不安に襲われていることを意識せざるを得なかった。

 「ダンちゃん、お帰りなさい。遅かったのね。」
 「ごめんね。自警団の打ち合わせが長引いちゃって。」
 デイジーから渡されたタオルで濡れた髪と顔を拭きながら、ダンカンは答えた。長い会議を終えて疲れていたが、出迎えてくれた妻の顔を見ることでダンカンの疲れは和らいだ。
 「ナナは…もう寝てるよね。」
 「うん。寝付けなかったみたいだけど、ミルクを飲んでベットに入ったらすぐに寝たわ。」
 「そうなんだ。珍しいね、寝付けないって。」
 ダンカンは寝室のドアを音を立てないようにそっと開き、ベットで眠っているナナの姿を確認した。デイジーの言う通り、ナナは布団にくるまって安心したように眠っていた。本当はナナの顔をもっと間近で見たかったが、また起こしてはいけないと思い、寝室の扉を少し開けて確認するだけにしておこうとダンカンは思った。

 

  明日も引き続き自警団の会議が行われることになったため、ダンカンはデイジーを先に寝かせ、明日の会議の準備を始めた。水車小屋の件は、自警団内で疑心暗鬼の種を広げただけで何の結論も出ず、話さないほうがマシとしか思えなかった。疲れた頭ではあまり生産的なことはできないことを理解しているものの、考えるのをやめることはできなかった。

  (何が起こっているんだ…?)

  会議の準備をひと通り終え、冷たくなった紅茶を飲み干し諦めて寝ようとしたその時、目に止まった村の地図。ダンカンはあること気付きペンを取り地図に次々と印をつけていった。 印をつけたのは、畑荒らしや機械の故障などトラブルが発生した場所、そして最後に水車小屋。

(間違いない…北上している!)

 時系列順に追うと、印は南から北へと移動していた。

(でも…なぜこんな動きをしているんだ?人為的なものだとしたら、北に何がある?)

 閃きがまた来ないかと粘って考えてみたが、何も思いつかなかった。どうやら今日はもう頭を使い果たしたらしい。さすがにこれ以上の夜更かしは、明日の店の準備に差し障りが出てしまう。ダンカンは、明日また考えることにし、寝室へ向った。

 

  北側の国境近くにある賢者様の魔除け。

  この存在を失念していたことを、ダンカンは激しく後悔することになる。

 

 人狼。それは満月の夜に人間を食べた狼が、月光の魔力でその人物になりすまし、家族や友人を夜ごと1人ずつ餌食にしていく、忌むべき存在。

 

 

 終章
 太陽が登る前に目を覚まし、生地を捏ねてパンを焼く。自分でもよくわからなかったが、パンジーは今日もそうしようと思った。

 パンを焼いたところで、このパンを食べる村人はもういないのに。

 

 (何が「お姉ちゃんだったら仕方がない」だ。) 

昨夜襲撃した時のデイジーの表情。デイジーが表したのは、驚きでも恐怖でもなく、ただ悲しみだった。自分が死ぬのに、どうして恐怖を表さないのか。人狼には理解できなかった。

 

 自分たち人狼を封印していた村人を、ようやく滅ぼすことができた。犠牲は払ったがようやく自由の身になれたのだ。しかし、まだ各地には封印されている仲間がいる。仲間を助け出し、いままで封印してきた人間たちに復讐を果たすための戦いはまだ終わらない。
 もうこの村に戻ってくることはないだろう。

(さあ、始めようか、戦いを。)

 瞼の裏に残るデイジーの姿を振り切るように、人狼パンジーは早足で歩き始めた。

 工房の石窯は主人を失ったことに気付いていないかのように火を炊き続け、煙突からはいつまでも煙が吐き出されていた。

                                                                      -完-