今日も知らない街を歩く

雑記に近い形でちまちま書いていきます。

もしドラを読んで真摯さについて考えた

 @tomonzo_jpさんから貸本御礼。

主人公のみなみのモデルとなったのはAKB48峯岸みなみ。「この本は峯岸のルポルタージュともいえる」と作者がダイヤモンド誌上で話している*1のを読んで「そんな小説があるのか」とずっと気になっていたのですが、おかげさまで読むことができました。

ドラッカーをダシにした青春小説

 小説としては人物の掘り下げ方や描写が足りないとか、ドラッカーについては(まだ読んだことが無いので何とも言えませんが)断片的すぎる、などの意見はあるかもしれません。しかし、青春小説とドラッカーを組み合わせるという着想だけでも、この本は評価に値すると思います。僕はドラッカーのマネジメントを読みたくなりました。
 おそらく作者の岩崎夏海氏と編集部は、本を作る過程でしっかり「顧客の定義」「マーケティング」を行い、装丁を工夫するなどして狙いを定めたのでしょう。それが成功したからこそ200万部を越えるベストセラーになったのだと思います。

「真摯さ」って何?

 本を読み終えたものの、ドラッカーの言葉でまだ理解できていない個所があります。それは「真摯さ」。
 本書の中で、ドラッカーの真摯さについて以下の言葉が引用されています。

 "(マネジャーには)根本的な素質が必要である。真摯さである。"(「マネジメント」P.130)
 "うまくいっている組織には、必ず一人は、手をとって助けもせず、人づきあいもよくないボスがいる。この種のボスは、とっつきにくく気難しく、わがままなくせに、しばしば誰よりも多くの人を育てる。好かれている者よりも尊敬を集める。一流の仕事を要求し、自らにも要求する。基準を高く定め、それを守ることを期待する。何が正しいかだけを考え、誰が正しいかを考えない。真摯さよりも知的な能力を評価したりはしない。このような素質を欠く者は、いかに愛想がよく、助けになり、人づきがいがよかろうと、またいかに有能であって聡明であろうと危険である。そのような者は、マネジャーとしても、紳士としても失格である。
(中略)
学ぶことのできない資質、後天的に獲得することのできない資質、初めから身につけていなければならない資質が、一つだけある。才能ではない。真摯さである。(P.130)"


 しかし、本書では真摯さが何かついては明示的に語られてはいません。色々調べてみたところ、原語では「integrity」という言葉で、それが「真摯さ」と訳されているようです。語源は調べられなかったのですが、integrityの意味として「完全な状態」というのがありました。integrationが「統合」を意味するので、「(統合された)完全な状態であること」「一貫していること」というのが大まかな意味だろうと推測できます。
 では、何が一貫しているのか、一貫しているとはどういうことか。
 まだ漠然とした理解ですが、「物事に対する態度・姿勢」がそれなのかな、と思います。ネタバレになってしまうので詳細は書きませんが、最終章である第八章のみなみの行動を読んで、そう思いました。
 ちなみに、第八章のタイトルは「みなみは真摯さとは何かを考えた」です。「真摯さは、初めから身につけていなければならない」とドラッカーは説いていますが、それを象徴するかのように、この章だけドラッカーの引用が一つもありませんでした*2。「いくらドラッカーを読んでも真摯さは身につけられない」というメッセージでしょうか。この章に関しては、何回か読んでみます。


 面白かったけど、1600円は高いと感じます。これであれば、iPhone版かブックオフ、または文庫を待つ方が良いでしょう。iPhone版はソーシャルリーディングができるのであれば、思い切って購入してもいいかもしれません。

 最後になりましたが、この本を貸してくれた@tomonzo_jpさん、ありがとうございました。

 それでは、また。

*1:それだけに、もしドラ映画化で主人公が峯岸みなみじゃなくて前田敦子というのが切ないです……。

*2:プロローグ・エピローグは除く。