今日も知らない街を歩く

雑記に近い形でちまちま書いていきます。

味の記憶・味の再現・味のあるべき場所

  麺飯食堂なかじまのスタミナ焼肉丼。

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  豚肉・ニラ・玉ねぎ・人参を甘辛く炒めた、いわゆる「男が好みそうな」男子ごはんに分類される一品。ご多分に漏れず自分も大好きな一品。

 

  「これ、家で再現できないかな?」

  そう思うようになったのは何時からか、正確には思い出せない。大抵の場合、対象になるのは生姜焼きとかスタミナ焼肉といった「切って炒めて味付けすればなんとかなるんじゃないか」系の料理か、サラダや前菜のソースである。 

 

  スタミナ焼肉を試しに作ってみた。具材はいいとして味はなんだろう。この甘辛さは砂糖とニンニクはある。醤油も必要だ。酒は要るか?入れておいても失敗は無さそうだ。でもこれだけだとパンチが足りていない気がする。一旦作ってみよう。

 

  できたスタミナ焼肉は、あの味からは遠かった。別にまずくはないし明日のお弁当の具もできたからいいんだけど。何が違ったのか。調味料か、それとも火の入れ方が違ったんだろうか。

 

  実のところ、「家で再現できないか」と思って実際に作って、家でちゃんと再現できたことは一度もない。大抵別の料理 ー良く言えば新しいオリジナルメニュー、悪く言えば再現し損ないの中途半端なメニューー になって終わる。料理に対する執着心は、在るようで無い。

  もし味が完全に再現できたら、という想像をした。いつも外で食べているあの味が自宅で食べられたら、という想像を。

 

  なんだか気持ちが悪くなってしまった。

  外で食べているというイメージと自宅で食べているというイメージが衝突を起こして、非常に強い違和感を感じた。「そうじゃない」と頭の中で声を上げた。あの味はあの場で食べて味わいたい、と思った。

  味覚が場所に強力に繋がれていた。自分でも意識していなかったが、味はその場所で味わいたい、という欲求があるのだろうか。ただ、それで気付いたことがある。4年前に今の場所に引っ越してきたが、それまでの自炊で作っていた料理を今はあまり作っていない。特に面倒くさいレパートリーではないのに、である。もし、無意識のうちに「あの料理はあの場所で食べたい」と考えていたとしたら。

 

  引っ越しの予定は特にはない。しかし、もし何らかの理由で今の場所を離れるとしたら、私は今作っている料理を作らなくなるのだろうか。玉ねぎ10kgチャレンジはもう続かなくなるのだろうか。

 

  完全に再現するのは嫌だけど、味は好きだから、なるべく近く、ただし近過ぎない程度に再現しよう。本気で再現を望まないのに「再現できないかな」と試すのは随分面倒くさく、不可解だと自分でも思う。

  まだ食材は余っているので、もう一回、麺飯食堂なかじまのスタミナ焼肉を再現チャレンジはできるし、やるつもりである。

  多分、今度も再現できない。

  そして我が家のお弁当のレパートリーに新しい1ページが加わるのである。