元T-SQAUREの和泉宏隆さんの訃報が届いた。
訃報を知った時はたまたま仕事で客先に出向いていたのだけど、あまりに突然でショックだったこともあり、その時のことをあまりちゃんと思い出せない。悲しいと思ったけど、それ以上に何が起こっているのかよく分からなかった、という方が正確かもしれない。
「早すぎる死」「受け止めきれない」、TwitterやFacebookにはそんな言葉が溢れていた。でも、和泉宏隆さんが死んだ時は、きっといつだって受け止めきれないだろうし、早く無かったから悲しくならないわけでもない。諦めをつけるための時間が早くなるかどうかだけど、本質的にはあまり変わらないのだろうな、とぼんやり思う。
T-SQUAREを離れてからの和泉さんはピアノソロに注力していたけど、T-SQAURE(THE SQUARE)時代の和泉さんは、アレンジャーとしても超一流。
アルバム「STARS AND THE MOON」所収の「MISTRAL」。
後にピアノアルバムとしても出しているけど、T-SQUAREの方が断然良いと思ってしまう。「最初に聴いたから」「思い出補正」は否定しきれないけど、それでもメロディー部分はピアノではなくブラス隊のほうが絶対良い。僕はT-SQUAREの好きな理由を「聴いていると冒険心が掻き立てられるから」と表現することにしているのだけど、この曲はまさにそれで、オープニングのキーボードとシンセドラムからメインのブラスセクションへ続く流れ、メイン後のチョッパーベースソロ、エンディングのブラス・セクション、テンションを中弛みさせず最後まで余すところなく聴ける曲は、なかなか無い。
MISTRALは、曲のフレームワーク自体が素晴らしいから、ピアノソロも聴けるし、エレクトーンの人気曲にもなっている。
言わずとしれた「宝島」。いつの間にか吹奏楽での定番曲となり、T-SQUAREのコンサートでも中学の吹奏楽部がゲストで登場して演奏をするまでになった曲だ。 この曲は「聴いていると冒険心が掻き立てられるから」という表現で一般的にも理解が得られると思っている。ピアノソロ部分ももちろん良いのだけど、メロディーラインとEWIの相性が抜群で、宝島を宝島足らしめているのはこれだとずっと感じて聴いていた。その分、吹奏楽アレンジはびっくりしたのだけど、あれはあれで完成された良い編曲だと思う。
でも、一番はやはりT-SQUARE編成のこの曲だと思っている。ピアノだけでは描けない世界をしっかり描き切っていて、遊び心もあって楽しい。
和泉宏隆ファースト・ソロアルバム。高校の頃にT-SQUAREを知ってその派生で手を出したアルバム。最初の2曲「DOUBLE RAINBOW」「BLUE FOREST」で心を掴まれたのを覚えている。森山徹「カナダ・インプレッシヴ」*1と書かれたリードと山岳の写真群。アルバムジャケットの写真と合わさって、雪山の幻想的な世界を感じることができた。受験生だったので、大学に入ったら山岳部に入ろうかとすら考えた*2。
和泉さんは、T-SQUAREを離れてからは、ピアノソロを中心に活動されていた。
ピアノ作品ももちろん良いのだけれど、それ以上にメロディーとアレンジが素晴らしく、やはり僕はT-SQUAREの和泉宏隆が本当に好きなんだと思った。
Facebookに元T-SQUAREの本田雅人さんが投稿していた。
そう、和泉さんの残したたくさんの名曲、名演は永遠に残るし無くなりません。いや、また違ったアレンジや編成のものが新たに生まれることすらあり得ます。これからもこの名曲達を後世に伝えていけたらなぁって思います。なにより和泉さんの曲は演ってて笑顔になれる!これが自分の曲にはないスゴいところ。楽しい気分になれる和泉曲、これからも演奏する機会に恵まれたいなぁ。
和泉宏隆と和泉宏隆の音楽はいつまでも生き続けます、みなさまとともに。
僕はこれからも、和泉宏隆の曲を聴き続けながら生きていく。