今日も知らない街を歩く

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歌姫に憧れる一観客 -【饗遊】歌姫 ~少年探偵解奇異聞 其ノ壱~ -

【饗遊】歌姫 ~少年探偵解奇異聞 其ノ壱~ に参加した。

 

disgoonies-utahime.coresv.com

  一般的な演劇のスタイルは「観客が客席に座り、舞台上の演者を鑑賞する」方式である。これに対して、こちらはいわゆる「イマーシブシアター」と呼ばれる形式の演劇で、「観客が演者と同じ空間にいながら参加する」形式の舞台である*1

 

  調べてみたら、今年常設型のイマーシブシアターがオープンしていた。

prtimes.jp

 

  以前に「演劇×体験型ミステリー」と題された「サラバ、偉大な魔法使い」にも参加したことがある。これも実際に観客が演者にヒアリングしながら謎を解き明かしていくタイプのアトラクションだったので、イマーシブシアターだと捉えている。

www.scrapmagazine.com

  自分の行動次第で物語の結末までもが変わる「WAR→P」。

7th-castle.com

 

 話を【饗遊】歌姫 に戻すと、イマーシブシアターとして良いと思うのは、「観客にも参加してもらうのだから、観客にも役割をきちんと与えよう」としている点である。それが結果として、演者と観客を一つにつなぐ舞台装置として機能させていた。

 

観客一人ひとりに与えられた名前とシナリオ

  舞台はある豪華客船。登場人物は船長や副船長をはじめとしたクルーや関係者。そして、観客はその豪華客船に乗り込んだ客の一人になる。テーブルにつくとシナリオが配られる。

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  この演劇は最大80人程度参加できるらしいのだが、このシナリオは、その80人全員異なる(!)登場人物のシナリオである。この時点で観客には舞台の役割が与えられているのである。アドリブで演者に対してそれっぽい会話をする、といった楽しみもできる(もっとも、演者に触れる行為など、メインストーリーに大きな影響与えてしまうような度外れた行為はできない)。

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  劇の舞台は豪華客船。料理が振る舞われ(会場はレストランなので、写真の通り本当に料理が出てくる。どれも美味しかった。)、時にはシェフが挨拶に来ることも*2。劇本編が始まると、観客自身もある程度シナリオに沿って動くことが求められる。もっとも難易度の高い内容では無く、アイスブレイクとしての役目が強い。好みは分かれるかもしれないが、僕はとても良いと思った。観客と演者をつなぐのであれば、観客は観客のままではなく、舞台装置に乗れるような役目を与えるというのは、筋が通っているからである。

 

  その後、本編で事件が起こり、同じテーブルの観客同士でチームを組んで事件の究明に挑むことに。残念ながら推理自体は全然駄目で悔しい思いをしたのだけど、それはそれとして各登場人物に想いを馳せられたのは、与えられたシナリオに依るところもあるのかもしれない。

 

  タイトルに「~少年探偵解奇異聞 其ノ壱~ 」とあるので、続編を作るつもりで上演しているのだろう。その続編では、より洗練された舞台装置が用意されていると信じている。今回は観客に登場人物が(おそらく)ランダムに割り当てられていたが、この役割についても改良されてくるのでは、と想像している。

 

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  劇中に登場する歌姫をイメージしたカクテル「Diva」。

  酒に強くないこともあり、特に食指が動かなかったカクテルだけど、今回与えられた登場人物とシナリオに沿うと、飲まないという選択肢は無いなと思い直して注文した。思ったより口当たりがよく、一気に飲んでしまった。一杯だけで済ませたが、登場人物だったら二杯目もいったのだろうなと、酔いの回った頭で空想しながら帰路についた。

*1:冒頭で「観劇」ではなく「参加」と書いたのは無意識だったけど、イマーシブシアターの定義に沿えば間違っていないと思われる

*2:ここで書いているシェフは本当のシェフではなく、劇中に登場する演者のシェフのことである。